2006年04月22日
モンラッシェ95年
先日 東京で友人と一緒に
生まれて初めて モンラッシェを飲んだ
正真正銘のドメーヌ ロマネ コンティの
モンラッシェ 95年
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ホノルルの
あるリカーストアーのオーナーから
私に電話があったのが 98年の5月
わざわざサンフランシスコからだった・・
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Mr. Uchida!
-------今 サンフランシスコに
ワインの買い付けに来ているが
ちょっと 相談がある---------
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・
えー どうしたの?
------DRCのモンラッシェが手に入るけど
誰か日本人で買いたい人を知らないか?
欲しければ 3本手に入る------
と
・
・
えっ 何?
モンラッシェ?
DRCの?
ホント?
・
・
-----本当だ-------
一本 いくらするの?
----- ○○○ ドル-----
------今日中に すぐ買い付けないと
他のバイヤーに押さえられてしまう-------
・
・
うーん そうか!
○○○ ドルか!
・・・・・・・・ やっぱ 高い!・・・・
うーん そうだなー ・・・ ・・・ ・・・
今すぐ誰とは 思い浮かばないけど
とりあえず 3本 全部買ってきて・・
・
・
------本当か? 3本全部だな?
うん、 そっ そう!
ぜ、 ぜ ん ぶ !!・・・
少し ドモりながら
・
・
電話を切ったあと
しばらく ドキドキして
ぼう然として天井を見た・・・
おー モンラッシェかー
・
・
年間2~3000本しか生産されなく
もし私が間違っていなければ
日本には 生産量の一割が
総代理店のサントリーを通して
入荷次第国内の 各有力得意先に
<割り当て> される
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ホテルオークラに 1本
三越に 2本・・・とか
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世界で最高宝と言われている
仏 ブルゴーニュ産白ワイン・・・
・
・
生まれてこの方
ワインカタログでしか見た事がなかった私は
とにかく 奇跡に近いこの買い物に
かなり興奮したのを覚えている・・・
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・
ワイン好きな方なら
分かると思う・・・
私が電話を受けながら
どのくらい気分が高揚したか・・
・
・
いくらするの ?
そういう 問題じゃなくて
手に入らない・・・
むかーーーーしの
「越乃寒梅」みたいなもの
・
・
ありとあらゆる コネを使って手に入れる・・
<だから 旨い?>
確かにそれもある かも・・・・
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・
世界で最も素晴らしい希少な白ワインを
自分が手に入れてから8年が過ぎた・・・
そして今年
東京で 親友と1本空けた
・
・
タオルに包んで機内持ち込みにして
大事に 抱きかかえながら?横に寝かせて
誰にも盗られないように・・・
盗られるわけがない けど・・
・
・
友人が連れて行ってくれた
東京のある料理屋に
持ち込ませてもらって・・・・
そう 生まれて初めて
モンラッシェを飲んだ・・・・・
ウオー ! 膝まづかなかったけど・・・
白身の刺身と 見事にマッチングし
歓喜の 声・・・
・
・
20年前に フランスに出張し
DRCの畑を見に行った時のことを
思い出す・・・
・
・
味は?
うーん・・・・・
そりゃ 最高って言えば最高だったけど
ま 別に・・・・
腰が抜けるほどではない
・
・
フランス人は 伝説を作るのがうまいから・・
日本人はすぐ そういう歴史と伝説に
好奇心を示し
希少性とかブランド性、
そして 値段が高ければ余計に
心が グラグラ!っとするから・・
・
・
しかし
コルクを開けてもらって
驚いた・・・・
その芳醇な香り・・・
・
・
ブルゴーニュ白ワインの中でも
ひときわ輝く あの黄金色・・
あれは<白ワイン>と言うより
<黄金ワイン>と種別すべきだ・・・
・
・
自分の身体全体にその芳醇な香りが
回ると言う感じ・・・
そう香りが口の中から 身体全体に・・・・
そして抜栓して 5分毎に
風味が変わって、まろやかになる・・・
店のマネージャーに
「少し ボトルを置いたままにしてください」
と言って 最初は 少しの量で飲み始める・・・
・
・
最初は少し照れていた
恥ずかしがりやの子が
フランス → サンフランシスコ → ホノルル
そして 東京 と長旅を終え
10年の眠りから 起こされて
ちょっと 人見知りをしているようだ・・・
・
・
しかし1分ごとに だんだん
その血統の良さを誇示するがごとく
我々の身体を通して、
部屋中に芳醇な香りを
駆けめぐらせる・・・
・
・
ま そんな感じ・・・・
・
・
コルクが とても長い・・・
ボトルのガラスの肉厚がすごい
あれだと ちょっと床に落としたくらいなら
割れないかも・・・
・
・
ま その程度・・
・
・
でも 最高だった
将来の投資の為に・・・と思って
購入してから
そのワインショップのセラーに
ずーと置かせてもらっていた・・・
・
・
今誰かに売ったら ○○○○ドルはする・・・
なんて 時々思っていたけど
ほとんど忘れていた・・・
・
・
でも ふと ここ1-2年・・・・
自分で 飲んじゃおうかな・・と
考えが変わった・・・
・
・
だって お金にしたら
お札は 食べたり飲んだり出来ないし・・・
・
・
歳を取って 飲めなくなっても
もったいないし・・・・
死んでから お棺にかけてもらったって
それこそ <もったいない>と言うものだし・・・
いいや 飲んじゃえ・・と思った
・
・
東京に行くと
いつも美味しい店に連れて行ってくれる
グルメの親友と一緒に飲もうと・・
そう決めた・・・
・
・
来週 日本に行くという2月の下旬に
そのワインショップに 出かけた・・・
セラーに預かってもらっているモンラッシェを
一本 引き取りに行く為に・・・
・
・
そのワインショップを訪れたのは
数ヶ月ぶりだった
イヤー ご無沙汰!
・
・
いつもの おばちゃんスタッフと再会する・・・・
Mr. Uchida! How are you?
イヤー 久しぶり・・・元気元気 と・・・
僕の子供 (ワイン) は、元気にしてるかい?
私がそう冗談を言うと・・・
うん・・・ ワインは元気だけど
昨年の暮れに
オーナーのMr. Kam が亡くなったのを知っているか?
と言われた・・・
えっ? 本当?
Mr. Kam が?
・
・
モンラッシェを買い付けてきてくれた
そのオーナーは
昔から腎臓を悪くしていて
人工透析をしながら仕事をしていた・・・
私がハワイに初めて来た
91年以来からの長い付き合いだった・・・
・
・
リカービジネスだけでなく
色々と物知りで
人生や ビジネスに
哲学のようなものを持っていた人だった
・
・
仕事の話もさることながら
よく 日米の文化の違い
ビジネスの違いなどについて
たくさん話を聞かせてもらい
ちょうど息子くらいの年齢の私を
よく可愛がってくれていた・・・
・
・
その訃報を聞かされて
何かものすごく 淋しい気持ちがした・・・
よく分からないけど
ポッカリ 気持ちに穴が開いてしまったような・・・
あー あの人ともう話が出来ないのかー と
・
・
ワインセラーの横にある事務所に
奥さんがいた・・・
おー ミスター内田!
・
・
I am sorry to hear ~
お悔やみを言った・・・
まだご主人を亡くして2ヶ月ほどの奥さんは
心なしか 小さくなったように見えて
やはり 元気が無かった・・・
・
・
仲の良い夫婦だったから当然だろう・・
「ご主人には 仕事以外でもいくつも良い話を
聞かせてもらって勉強になりました」・・・と
米国式に 奥さんをHug して慰めた・・・
・
・
東京で 初めてモンラッシェを口に含んだ時
そのリカーストアーのオーナーの面影を
偲びながら 心の中で 献杯した・・・
・
・
そのモンラッシェ・・・・
シャルドネ種がこの世に生まれ
収穫され醸造されてから
約10年・・・・・
そのオーナーは70歳を目前にした人生だった
・
・
モンラッシェを飲みながら
時の流れとか・・・
人のご縁とか・・
人間の命とか・・・
そして
自分の生かされている貴重な人生とか
様々な この世の中の<摂理>も共に
味わうことが出来たような気がする・・
投稿者 : 2006年04月22日 19:58
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コメント
蓼川社長
いつもご愛読ありがとうございます。
そうです。VWCのAllen Kamさんです。
いつも私が店に行くと色々な事を教えて
くれ、お互いに話を楽しんだ人でした。
ワインは本当に奥深い・・・
味だけでなく、「人生」とか「時」を
感じさせてくれます。
ワインが聖書に出てくるのには、何か
偉大な意味があるのではないでしょうか。
投稿者 内田 : 2006年04月23日 11:44
大変お世話になります。
モンラッシェの長いコルク、芳香等など自分で勝手に想像しながら一人、ウオ~と溜め息をつきながら拝読しました。
お亡くなりになったKam氏とはひょっとしてAllen Kam氏でしょうか?もしそうならRS在籍中にお世話になった方です。
彼の名刺の裏に印刷されていた、メジャーなワイン地方の年別出来具合のスコア表を印象的に記憶しています。
当たり前の事ですが、人は絶対に生涯を終える順番を迎える宿命なのですね。
その順番が来る前に、美味しい物は是非とも賞味しておきたいと思います。
Kam氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
投稿者 蓼川 : 2006年04月23日 09:39