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2006年05月02日
戸籍謄本 その2
「何でしょう お願いと言うのは・・」
急に 頭が冴え始めた・・・
浩ノ宮殿下がいらっしゃると聞いたら
途端に 集中力が増した・・・
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「 あのー 内田さん・・・」
「 はいっ!」
とお互い 前に身体をのり出す・・・
「 殿下が来店されるということは極秘にお願いしたい・・」
「 極 秘 ? はい承知しました」
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「それからね、この殿下の来店は一切店の宣伝に使わないように・・」
「 宣伝? はい 使いません」
「 当日以降もご本社以外、一切口外しないでいただきたい・・」
「 口外? あー それは 絶対に致しません・・・」
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・
「それからね・・・」
・・・ずいぶんある お願いが・・・
「 当日ですけど 誰が鉄板焼きを焼いてくださいます?」
「 はー? 誰? あー それは鉄板焼チーフに担当させます」
「 チーフね?」
「はい チーフ・・・・」
「あのー内田さん・・
そのチーフの方の 謄本を入手してくださいませんか?」
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「 はー? トウホン ですか?」
「そう 戸籍謄本・・・」
何で 戸籍謄本なの?
そう思ったが、一等書記官の顔を見ていると
決して冗談ではなく マジであった・・・
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「コセキトウホンって あの 戸籍謄本ですか?」
「はい そうです・・」
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はっとして
ちょうど 本人のビザ申請書類のファイルが
2階の事務所にあるのを思い出した・・・
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「あのー 少しお待ちいただけますか?」
そう言って 私は事務所に保管している
日本からの派遣従業員の人事ファイルを確認した・・・
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・
あった!
そのチーフの労働許可証を取得する為に
昔 揃えた各申請書類のファイルに戸籍謄本があった・・・
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・
急いで 1部 コピーをして
階下に降り、一等書記官に
あのー 少し取得日が古いのですが
これでよろしいでしょうか?と
手渡す・・・
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・
一等書記官は そのコピーをじっくり見て
顔の表情が少し緩んだ・・・
「 はい これで結構です。 さすがサントリーさん!」
と 誉めてくれた・・・
「あー はい・・・」
何で戸籍謄本が必要なのかは
よく分からなかったけど
一等書記官の表情を見て、
こちらも安堵した・・・
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・
それから 内田さん!
・・・・・・ まだ あんのかよ! ・・・・
「 はいっ !」
「 当日は必ず このチーフシェフが担当するようにお願いします」
「 はいっ ! かしこまりました!」
体育会出身の私は こういう時の応対が素晴らしい・・
完璧である・・・
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・
一等書記官 それはそれは安心した表情で
店の外に待たせてあった
外交官ナンバーの日本大使館の車に乗り込んだ
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・
お見送りを済ませ店内に戻った私は
何で戸籍謄本なんだよ・・・・・・ と思った
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・
しばらく考えて分かった
そうか!
殿下の 1m 面前で、刃物を持つからだ・・
日本に照会して 調べるんだ!
彼の 氏 素性、 犯罪経歴などを ・・・
おー !
特高警察みたいだ・・・なんて
驚き、 感心し、そしてちょっと背筋が寒くなった・・
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・
それから二週間ほどした土曜日昼の12:30が
浩ノ宮殿下ご来店の時間だった
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当時 殿下がオックスフォード大学に
留学されていた事は
もちろん知ってはいたが
驚いた・・・・
まさか この店に殿下ご自身が来られるなんて
まさか 私が殿下をお迎えするなんて・・・
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当日はロンドンでは珍しい 青空の好天で
私も朝から 緊張して
一番上等のスーツを着て出勤した・・・
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従業員には 前の日の夜に発表し
丁度 昼12時から日系企業の婦人会30名の
団体予約も入っているし
他のお客様にも くれぐれも気を配るよう・・
騒いだり、動揺せぬよう・・・
駐英大使ご夫妻と浩ノ宮殿下に失礼の無い様に・・と告げた
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皆 普段 掃除しない所まで綺麗にしている・・
そのくらい 毎日やれよ! と思うほど・・
心配していた 日系婦人会の奥様方は
皆開店12時より前から 全員集合し
一般席に案内が完了していた・・・
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いよいよ 12:15分になる・・・
自ら 玄関から 鉄板焼きの個室、
そして 男性化粧室の中の中?まで
入念にチェックしながら
全て最終確認を済ませる・・・
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あと 15分で
日本国の 皇太子とご挨拶をする・・
おー こりゃ日本の親父に知らせなきゃ・・・
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店の周辺は ロンドン中心地
バッキンガム宮殿、セントジェームス宮殿の隣接するエリア・・・
週末には平日と打って変わって
車の通りが少なくなる・・・・
セントジェームス通り・・
日本で言うと
ちょうど皇居近くの<日比谷通り>くらいの感じかもしれない・・
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正午12:30 ピッタリ!
外交官ナンバーの 黒塗りの車が
合計5台 店の前に次々に停まった・・・・・・
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・
・・・・次号に続く・・・・
投稿者 : 2006年05月02日 10:32
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